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京都家庭裁判所 昭和38年(少ハ)4号 決定

本人 T (昭一八・六・一三生)

主文

本件申請を却下する。

理由

(一)  本件申請の理由は「少年は昭和三七年七月四日京都家庭裁判所において中等少年院送致決定を受け浪速少年院に在院中昭和三八年六月一三日満二〇歳に達し更に同年七月三日をもつて少年院法一一条一項但書所定の収容期間を満了したところ未だ犯罪的傾向が除去されておらないとの理由で同法二項所定の収容継続申請をなし同年七月三日少年を昭和三八年一二月三一日まで同少年院において継続して収容する旨の決定がなされた。しかるにその後も素行おさまらず種々の反則を繰返し同少年院における処遇に困難をきたし遂に同年一〇月三一日には河内少年院に移送されるに至つたのであるが、残余の期間でもつてしては同人が社会生活に適応し得る程度に矯正教育の効果を期することが不可能であるから更に一〇ヶ月程度収容を継続する旨少年院法一一条所定の決定を求める」というにある。

(二)  ところで少年院は家庭裁判所から保護処分として送致された少年を収容してこれに矯正教育を授ける施設であつて少年が満二〇才(送致後一年に満たざる時は一年の期間が満了する時)に達すれば退院させなければならぬのが現行法上の原則である(少年院法一一条一項本文但書)。

しかしながら退院時期に達した少年の中には未だ要保護性の除去されないものがありかかる者をそのまま退院させ社会の荒波の中に放置することは結局少年法の目的たる少年の健全な育成を期するゆえんでないことにかんがみ特に同法一一条二項の要件ある場合に限り更に成人に達して後も保護処分を継続することを例外的に認めたのである。そこで再度の収容継続の可否を考えるに少年院法一一条二項にいう「前項の場合」とは同条一項に規定する“満二〇歳に達して退院する場合”又は“送致後一年の期間が満了して退院する場合”を意味し、“継続収容期間が満了して退院する場合”をも意味するものと解することは文理上困難である。

さすれば少年院収容が保護処分という名を付せられているけれどもその実質は長期間強制的にその自由を拘束する面を有すること及び上述した収容継続の現行法上における例外性よりして上述文理上の難点に目をつむり再度にわたる収容継続も現行法上許されているものと解すべきではない。

(三)  しからば本件申請は審判を開始し少年院法一一条三項所定の意見を徴するまでもなく失当であるからこれを却下することとし少年院法一一条、少年審判規則五五条に則り主文のとおり決定する。

(裁判官 大森政輔)

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